白金ちな


こんにちは!白金ちなです。

「モノ」の買い物では1円の違いにも敏感なのに、「コト」の買い物ではろくに値段も確認せずにぶわーっと使ってしまう派です。うちの家計簿がおそろしい原因はこれ・・・!

電力自由化から1年経ちました。昨年の記事ではあまり盛り上がっていない状況とその理由について書きましたが、今はどうなっているのでしょうか?少しずつ新しい事業者の数も増え、電力会社を切り替える人が増えてきているようです。

しかし、私の周囲では電力会社を切り替えたという声はそれほど多くありません。特に新たに参入した企業と契約したケースはまれです。

自由化後の切り替えが思ったほど進んでいない理由は、「手続きが面倒そう」というイメージが影響しているようです。実際、手続きは本当にそんなにも大変なのでしょうか?


5月から電気料金がまた値上げになることから、自由化に伴う電気代の節約に注目が集まっています。同じように電気を使っても電気代が下がる特効薬になり得るのでしょうか?

電力自由化のまとめ、第2弾です。

電力自由化のは今どうなっているのか?

電力自由化について、人々はどの程度知っていて、実際に切り替え(スイッチング)をした人はどのくらいの割合なのか、みていきましょう。

認知度は高くなっている

ソフトバンク株式会社は、新しい料金プランの発表を機に電力自由化に関する調査をおこないました。それによると、「電力自由化」という言葉を知っているかとの質問に対し「はい」と答えた人は90%を超え、一般的な認知度はかなり高くなっていることが分かりました。

電力自由化アンケート01

ソフトバンク株式会社 「電力自由化に関する調査(2017年4月)」より


ただ、電力自由化に関しては実施前から認知度は低くはありませんでした。博報堂が2015年におこなった調査によると、開始半年以上前にもかかわらず80%の人が「知っている」と答えています。この時は「言葉は聞いたことがあるけど内容はよく分からない」という人が多数でしたが、実施後1年経過して内容についても理解している人がだんだん増えてきているのではないでしょうか。

事業者数も増えている

自由化際しに新たに参入してくる電気小売事業者を「新電力」と称します。その勢力は今や全国390社に上ります。かつて9社しかない大手電気事業者が全国の電気市場を独占していたことを考えると、大きな変化です。ところで、ガス自由化の新規参入企業者は実施時点で10社でしたね・・・。

<新電力の企業数の推移>
2015年8月 小売電気事業者事前登録開始 → 0社
2015年12月 事前登録開始4か月後 → 119社
2016年4月 電力自由化スタート! → 291社
2016年8月 電力自由化4か月後 → 339社
2017年4月 電力自由化1年後 → 390社



新電力はもともと電気事業に関わっていなくてもかまわないので、業種も電気・ガス・石油などエネルギー関連にとどまらず、携帯電話、ネット通信、ケーブルテレビ、鉄道、旅行会社などさまざまな分野から参入しています。東京電力や関西電力など、旧大手電気事業者に対抗する存在である新しい事業者の数が増えるほど、競争が激化して自由化の効果が高まります。

電力会社を変える人も増えてはいるが・・・

では、その新電力に電力会社を切り替えた(スイッチング)件数はどうでしょうか?先ほどのソフトバンク株式会社の調査によると、電力自由化後に電力会社を変えた人は16.8%ということです。あれ、意外と多いですね。調査では20%にも満たないと驚きの表現で伝えられていましたが、私の感触ではもう少し低いのではないかと思います。

内閣府が3月に発表した資料によると、昨年12月までに電力会社を新電力に切り替えた契約件数は約225万件で、全体の約3.6%です。4カ月間のタイムラグがあるとはいえ、16.8%とはずいぶん開きがあります。同じ電力会社内で契約内容の見直しをした件数を合わせてみても、電力自由化で契約をしなおした人は7.2%にとどまります。

地域別のスイッチング(他社切替)件数

管内他社切替実績
(単位:万件)
率※
(単位:%)
北海道11.364.1
東北7.041.3
東京130.05.7
中部17.042.2
北陸0.910.7
関西45.654.5
中国0.770.2
四国1.570.8
九州10.611.7
沖縄0.000.0
全国225.03.6

地域別の自社内契約切替件数

管内自社内切替実績
(単位:万件)
率※
(単位:%)
北海道0.20.1
東北1.60.3
東京64.62.8
中部95.412.5
北陸0.80.7
関西21.72.2
中国29.58.4
四国1.10.6
九州8.81.4
沖縄0.10.1
全国223.83.6


白金ちな



おそらくソフトバンクの調査における調査対象は新電力に関心が高い層だったため、高めの数字が出たのではないかと考えられます。

一方、内閣府の資料は昨年12月のデータを参照しているので、こちらは逆に小さめに見積もられている可能性もあります。

というわけで強引に間をとって、電力自由化で電力会社を変えた人の割合は全体の約10%、ということにしておきましょう。

切り替えない理由は「面倒だから」

電力自由化のことを知っている人は9割いるのに、実際に切り替えた人は1割程度という結果は、何を表すのでしょうか? 私は「調べてみた結果トクでないことが分かったから」との意見が多いのではないかと予想しましたが、現実は違うようです。

手続きには手間と時間がかかると考える人が多い

アンケート調査によると、切り替えをしない理由は「手続きが面倒そうだから」が圧倒的です。調べてみた結果やめたのではなく、それ以前に比較検討すらおこなっていない段階で躊躇している人が多いのです。

電力会社を切り替えない理由

ソフトバンク株式会社 「電力自由化に関する調査(2017年4月)」より


アンケート結果の「~そうだから」という回答が並んでいる様子からもそのニュアンスが伺えます。「面倒そう」、「安くなさそう」、「どの会社がいいか分からない」「お金がかかりそう」は、検討した結果出てくる意見ではありませんよね。やる前からウンザリしている感じが伝わってきます。

手続きにどのくらい時間がかかると思うかを調べたアンケート調査では、34.2%の人が「1時間以上かかる」と考えていることが判明しました。1時間“以上“ですから、何時間もかかると考えている人もいるということです。実は、この予測は現実とは大きくかい離しています。

電力自由化アンケート02

ソフトバンク株式会社 「電力自由化に関する調査(2017年4月)」より

実際の手続き時間は30分以内

実際に手続きにどのくらいの時間がかかったかの調査は内閣府がおこなっています。それによると60%の人が30分以内に手続きが完了していることが分かっています。また、切り替えを経験した人のうち8割の人が手続きは「簡単だった」という感想を述べています。先ほどの「手続きは大変で時間がかかる」といった非経験者のイメージとは対照的です。

電力自由化アンケート03

ソフトバンク株式会社 「電力自由化に関する調査(2017年4月)」より


おそらく大変だと感じるのは、手続きにかかる時間ではなく比較検討する手間ではないでしょうか。「これに切り替えよう」と決めるまでには、利用可能な電力会社を探し、それぞれの電気料金がどのくらいになるのか試算して、その前に現在の利用状況を聞くために電力会社に問い合わせして・・・と比較検討するのは忙しい日々を送っている人にはけっこうな負担です。

しかし、自由化スタートから1年がたって、電気料金の比較サイトもかなり育ってきました。比較検討にはこれらのツールが役に立ちます。
id=”3″>電気料金比較サイト4選

電力自由化が普及するカギを握っているのは比較サイトだといわれています。代表的なものをご紹介します。


エネチェンジ
日本初の電気料金比較診断サイト。イギリス発ベンチャーのケンブリッジエナジーデータラボの日本法人。電力消費に関するビッグデータ解析を得意とし、そのアルゴリズムをもとに各世帯の料金プランを比較できるサイトを立ち上げる。格安SIMの比較サイトなども手掛ける。電力自由化について手続きや内容に関する相談といった無料サポートもおこなっている。エネチェンジのサイトから直接申し込むことも可能。電気代だけでなく、ガスとのセット料金でもシミュレーションでき、かなり精度が高い。


タイナビスイッチ
太陽光発電関連および省エネ商材などのマッチングサイトを運営する株式会社グッドフェローズの電気料金シミュレーションサイト。「中立性」と「正確性」を企業の社会的責任と位置づけ、独自の高精度シミュレーション開発を進めてきた。シミュレーションに必要な項目は地域や月間使用量といった基本的なことから、戸建てかマンションか、寝室の数、家族人数(子供の数も)、太陽光発電システムやIHクッキングヒーターを使っているかなど詳細にわたり、個別事情に基づいた試算が可能。


新電力比較サイト
電気料金の比較ができるサイト。個人で運営しているものの電力会社や料金プランの掲載数は豊富。新聞や経済雑誌に取り上げられるなど注目されている。管理人名は「石井」。入力項目は地域・契約アンペア・月間使用量のみで、他サイトと比べるとシンプル。対象は「従量電灯」だけなのでオール電化やガスとのセット割りなどには対応していない。


価格.com 電気料金比較
おなじみのカカクコムの電気料金比較ページ。電力会社や料金プランを変更した場合の節約額がひと目で比較できる。入力項目は地域・世帯人数・月間使用量で、それほど多くはない。料金比較だけでなく、切り替え経験者による手続きや節約の結果といった感想も参照できることが特徴。

白金ちな




上記サイトはすべての業者を網羅しているわけではありませんが、複数の比較サイトを利用すれば、ほとんどカバーできるのではないでしょうか。

気を付けたいのが、試算された節約額は「別プランに同時加入」や「月々の利用額が○○円以上」などのさまざまな条件が前提である場合があります。

本当にその条件で加入できるかどうかは、利用者本人が判断する必要があります。

値上がりが続く電気料金、節約にも限界が・・・

電気料金は上がる一方です。自由化は電気代節約のカギになるのでしょうか?

大手7社が5月からの値上げを決定

北海道電力24.3%
関西電力22.1%
東京電力17.0%
東北電力15.3%
九州電力12.9%
中部電力12.7%
四国電力12.4%

<それぞれの地域におけるモデル世帯の値上げ幅>

全国9つの電力会社から成る電気事業連合会は、2017年5月から電気料金を値上げすることを発表しました。

24%値上げとなると、月6,000円かかっていた電気代が7,440円になることを意味します。一度上げられた値段はなかなか下がりません。じわじわと家計を圧迫する様子が目に見えるようです。

値上げの主な原因は再生可能エネルギーを普及させるための「賦課金」の増額です。火力発電の原料である液化天然ガス(LNG)の価格も上昇しており、電気料金が今後下がる気配はありません。


80%以上の人が電気代を高いと感じている

先ほどのソフトバンクの調査でも、アンケートに答えた人のうち82.2%が現在の電気代を高いと感じています。しかし電力会社は他の商品やサービスのように「高いから他のにしよう」というわけにはいきませんでした。住んでいる地域の電力会社1社としか契約できなかったからです。

ところが、自由化で新規参入企業(新電力)と既存電力会社との間に競争が生まれたことにより、消費者は料金やサービスで業者を選べるようになりました。電力会社にされるがままではなく、こちらに選択権が移ったのです。月1,000円を超える値上がり分を、コンセントを抜くなど地道な節電で取り戻すのは大変です。しかし、もし切り替えでカバーできるのであれば、最初の1回の手続きだけで済みます。

電気代が安くなる可能性が高いのは…

注意していただきたいのは、電力会社を変えれば必ず電気代が安くなるわけではないことです。切り替えが有利に働きやすいのは以下のような世帯です。

自由化後の電気料金の比較をすると、電気使用量の多い家庭ほど節約額が大きくなる傾向があります。電力会社からするとたくさん電気を買ってくれる人が「上客」なので、新規顧客を取り込もうとする新電力と、顧客の囲い込みをしようとする既存大手の間で価格競争が起こっているからです。逆に、一人暮らしや留守が多い家など電気使用量の少ない世帯では、あまり大きな節約は期待できません。

また、電気使用量が多くても参入企業が少ない地域も同様です。参入企業が多い地域は関東・関西など都市部です。とはいえ実際にどうなるかは見積もりをしてみないと分からないので、先ほどの比較サイトを参考にしてください。その時も、単純に節約額だけに注目するのではなく、条件や注意事項を詳しく見る必要があります。

結論:「手続き」は大変ではないけど「判断」が大変

白金ちな

長々とお話してきましたが、まとめるとこんな感じです。

  • 手続きはけっこう簡単
  • 使える比較サイトが増えている
  • 誰にでも切り替えのメリットがあるわけではない
  • 結局判断するのは自分

電力自由化に関しては、面倒くさそうなイメージが必要以上に先行している気がします。比較や手続きといった「作業」には大して手間はかかりません。あとは「判断」だけです。

あ、でもこれが一番しんどいという話もありますが。。