白金ちな


年末ジャンボ宝くじの抽選結果が出ましたね。皆さん、いくらか当たりましたか?

300円1枚だけ当せん、それすらナシ、という人がほとんどではないでしょうか。私は自分の運のなさを自覚しているので宝くじは買っていませんが、買ったとしても当たる気がまったくしません。


宝くじって本当に当たるのでしょうか?当たっている人がいるので当たるのでしょうが、いったいどのくらいの確率で当たるのでしょうか?

そこで、今回は宝くじが当たる確率について検証してみました。結果は想像を絶するものでしたが、一方で思わぬ発見もありました。買った人も買わなかった人も、楽しんでいただける記事だと思います。

億超えは75本も入っている!

宝くじは文字通り「くじ」なので、「当たり」が入っています。みなさん、宝くじにはどのくらいの当たりくじが入っているかご存じですか?

2016年の年末ジャンボの場合、1等の7億円からおなじみの6等300円まで、なんと5,551万550本もの当たりくじが入っています。

<第704回年末ジャンボ宝くじ>

等級当せん金額本数
1等700,000,000円25
1等の前後賞150,000,000円50
1等の組違い賞500,000円4,975
2等15,000,000円500
3等1,000,000円5,000
4等10,000円500,000
5等3,000円5,000,000
6等300円50,000,000

1億円を超えるくじは75本。1つや2つなら当たる気がしませんが、これだけ当せん本数が用意されていれば、どれかは当たるのではないかと考えるのは自然なことではないでしょうか。

まあ億超えとまではいかなくても、1,000万円くらいなら…という気にさせられる数字です。多くの人がそのような期待を抱いて宝くじ売り場に足を運ぶことでしょう。

しかし、大事なことは「何本のうちの75本か」という母数の考え方です。同じ1でも10分の1と1,000分の1ではずいぶん違います。宝くじの母数とは発行枚数です。

2016年の宝くじの発行枚数は1ユニット2,000万枚×25ユニット、つまり5億万枚です。これを母数にして、宝くじが当たる確率を割り出してみました。

宝くじ1等が当たる確率は2000万分の1

宝くじの当たる確率を算出して、それがどんな割合なのかイメージしてみました。

1等7億円が当たる確率

発行枚数5億枚のうち、1等7億円の本数は25本です。25÷5億=0.000005%、1等が当たる確率は2,000万分の1です。2000万分の1ってどういう確率でしょうか?

1kgの米には5万粒の米が入っているといわれていますから、400kg(約7俵)の米の中に含まれる1粒を探し当てるようなものです。

7俵

また、あるサイトにはこんな面白い表現がありました。その方の分析によると、宝くじ1等が当たる確率は「東京からフィリピンくらいの幅(距離じゃない)のあるボウリングレーンのどこかに1本だけ置いてあるピンに目隠ししてボールを投げて当てる」くらいの確率なのだそうです。

とにかく、とてつもなく低い確率であることが分かります。

【参考】

こめ屋がんたら「お米の単位

大西科学「レベル7

ここで読者のみなさんは「1等なんてぜいたくをいわなくても100万円や1,000万円ならもっと確率が高いのでは?」とお考えになったのではないでしょうか。では、一定以上の当せん金が当たる確率を図にしてみましょう。

元が取れる当たりくじはどのくらいあるのか

まず、いくら当たったら「宝くじが当たった」と実感することができるでしょうか。6等の300円や5等の3,000円では、当たったという感じではありませんね。少なくとも4等の1万円くらいは欲しいところです。年末ジャンボにお金を使う人は30枚の9,000円が平均ということですから、1万円以上を当たりと想定することにしましょう。以下は、宝くじの1万円以上が当たる確率をグラフにしたものです。

宝くじの当たりくじ比率

当たりが見当たりませんが、グラフの作成ミスではありません。円グラフの黒い線の部分には51万枚分もの当たりくじがちゃんと含まれています。この円グラフがダーツの的だとすると、この細い黒い線に当てない限り1万円以上を手にすることはできません。

仮に奇跡的に当たったとしても、1等7億円がもらえるわけではありません。黒い部分には4等1万円、3等100万円、2等1,500万円、1等組違い50万円、1等前後賞1億5,000万円が混在してします。では、あの細い黒い部分の内訳はどうなっているのでしょうか?その比率をグラフにしてみました。

1万円以上の当たりくじ内訳

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1万円以上の当たりくじは、ほとんどが1万円です。つまり、とてつもなく低い確率の当たりくじを引いたとしても、元を取るのがやっとなのです。

皆が夢見る100万円、1,000万円、1億円以上のくじは、髪の毛ほどしかなかったグラフ上の線の中にある、さらに細いクモの糸上にしか存在しません。ダーツの的に付いた1本の細いクモの糸に、あなたは矢を当てることができるでしょうか。

このように、当せん本数の多さを見た時の期待の高さと、確率を出した後の絶望感とでは、おそろしいほどの落差が存在することが分かる結果となりました。

300円の当たりですら1割の確率

ちなみに、「誰にでも当てられる」と評判の300円ですら、当たる確率は10分の1です。10人でじゃんけんをして1番になったら結構うれしいので、300円の当せんは貴重です。そう考えるとたとえ少額でも換金に行く気になりますね。


このように、宝くじで当たりを引くのは至難の業であり、当たりくじのほとんどは300円や3000円といった1万円以下の低額なもので占められています。

年末ジャンボを意気込んで買ったのに全然当たらなかったと落ち込んでいらっしゃる方は多いでしょうが、それは特別にツイていなかったのではなく、いたって正常な結果なのです。

宝くじは他のギャンブルと比べて割が良いのか調べてみた

宝くじがギャンブルかどうかは意見が分かれるところですが、仮にギャンブルと想定するとします。宝くじは他のギャンブルと比較して割が良いのでしょうか?悪いのでしょうか?

期待の大きさを表す「還元率」

宝くじ45.7%
競馬74.1%
競輪75.0%
競艇74.8%
オートレース74.8%
パチンコ約85%
カジノ約95%以上

ギャンブルには「期待値」というものが存在し、期待値が高いものほど勝つ確率が高いといわれています。期待値の高さは「還元率」で測ることができます。

還元率とは、参加者から集めた賭け金のうちどのくらいを払い戻しに使うかの割合を指します。還元率が高いものほど、当たる期待が高い賭け事ということになります。代表的なギャンブルの還元率をまとめてみました。

還元率が45.7%とは、宝くじの売上金額のうち54.3%を胴元である地方自治体や公益法人が先に受け取り、残る45.7%を当せん者に払い戻すことを示します。

つまり宝くじは主催者が10人の参加者から1万円ずつお金を集めて、「5万円は私がもらうので残る5万円をくじが当たった人にあげます」というゲームなのです。

10万円集めて10万円の賞金ではなく、半分を主催者がポケットに入れてからゲームスタート。いかがでしょう、あなたはそんなゲームに参加したいですか?

※総務省『宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率』より抜粋
※パチンコやバカラ・スロット・ルーレットなどのカジノの還元率は概算

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宝くじはあらゆるギャンブルの中でも還元率が低い部類に入ります。あまりイメージの良くない競馬やパチンコに比べても、宝くじは買う側が不利な設計になっています。

あまりの割の悪さから、一部の有識者からは「社会的弱者への税金」「愚か者への税金」などと呼ばれています。

ちなみに有名人の逮捕報道などでよく話題になる「バカラ賭博」の還元率は98%を超えています。違法カジノには必ずといっていいほど出てくるバカラは、参加者にとっては期待度の高いギャンブルなのです。

収益金は地方の財源になる

一応宝くじ関係者を擁護しておくと、宝くじの収益金の4割は地方公共団体の公共事業などに使われています。すべてが日本宝くじ協会の懐に入るわけではありません。あとは事務費・広報費・印刷費が差し引かれ、残りを当せん金として当せん者への支払いに充てられます。

還元率が低いのは公的な理由があるからですが、買う側からすると納得のいかない部分もあります。まずはそういう性質のものだということを知っておくことが大切です。

宝くじは時間的に長持ちする

宝くじは参加者への還元が少ないため割に合わないギャンブルだというお話をしてきました。では宝くじは全く買う意味のないものなのかというと、一概にそうとはいえません。なぜなら、宝くじはあらゆる賭け事の中で最も時間的に長持ちする種目なのです。

ギャンブルは一般的に、「賭ける→勝負する→勝つ/負ける→次に賭ける」というサイクルを経ます。パチンコやパチスロ、カジノはこのサイクルが非常に短く、数分・数秒で終わってしまいます。一方、宝くじは数日間かけて楽しむことができます。2016年の年末ジャンボの場合、発売期間が1ヵ月間もあり、その間ずっと「当たるかな?当たったらいいな」「1億円当たったら何を買おう」と夢を膨らますことができます。

宝くじは依存症になりにくい

時間的に余裕があるということは、考える余裕があるということです。時間や派手な演出で煽られることのない宝くじは、ギャンブル依存症になりにくいのです。もちろん宝くじにも依存性がまったくないわけではありませんが、パチンコやパチスロ、最近問題になっているスマホゲームのガチャに比べると非常に少ないのが特徴です。宝くじのために借金を繰り返して家財道具を売ってしまう人はいませんよね。

白金ちな


依存症の人は脳内に高揚感や幸福感をもたらす神経伝達物質が分泌されることで知られています。過去に成功した時の興奮がよみがえり、もう一度味わいたいという衝動が生まれることで依存症になります。

そこで思い出してほしいのが先ほどの宝くじの当たる確率の低さです。幸か不幸かあまり当たらないという宝くじの特徴が依存症になりにくい原因とはなかなか味わい深いですね。

それでも、夏休み前や年末になると激増する宝くじのCMは「射幸心をあおる」として問題視されています。

パチンコなどに比べて依存症になりにくいとはいえ、賭け事であることには変わりありませんから、生活に影響しない範囲でたしなむ理性が必要とされます。

まとめ:宝くじは損得勘定ぬきで楽しみたい

以上、宝くじに当たる確率と性質についてみてきました。

  • 6等300円以外はほぼ当たらない
  • 他のギャンブルに比べて還元率が低い
  • 1回で楽しめる時間が長い
  • 比較的依存症にはなりにくい

宝くじは当たらないから依存症になりにくいというのは個人的に大発見でした。当たりが少ないのが不満でしたが、当たりを増やすと依存症も増えてしまうのでしょうか。

くじの歴史は長く、最古のものでは『日本書紀』に記述がみられます。宝くじの前身は江戸時代に寺社が発行した「富くじ」ですが、当時は当せん者にお守りを授けるだけでした。日本においてくじ引きは占いや縁起物、ひいてはお祭り感覚で広まった文化です。現代における宝くじも、そういう位置づけで良いのではないでしょうか。

投資だと考えると、宝くじはまったく割に合いません。しかし、遊戯の範ちゅうであれば他にはない楽しみがあります。当せん番号を1枚1枚確認する時のワクワク感は何物にも代えられないものです。当せん番号発表前はけっこう本気で期待していたのに、はずれると「いいんだよ夢を買ったんだからアハハハハ」と乾いた笑いとともに強がりをいう人は、見ていてとても微笑ましいです。「当たればラッキー、はずれてもお賽銭」と割り切って、宝くじを楽しむ人がいるのは全く問題ないと思います。

ただし、高額になる場合は家族の同意を得たほうがいいかも知れませんね。