
「学歴なんて関係ないって、東大入ってからいってみたい!」って誰がいったか名言ですね。
学歴偏重は良くないといわれ続けているにもかかわらず、日本はまだまだ学歴重視だと思います。
学業成績が評価されるのは良いことだと思いますし、レベルの高い学校を目指して努力することは素晴らしいことですが、「どこの大学に行ったか」が生涯賃金にまで影響するのはちょっと…と思います。
学歴って本当に収入を左右するのでしょうか?
実はそれほど関係しないのではという淡い期待を抱いて、学歴と年収について調べてみました。
学歴はどのくらい収入に影響するか
まずは大卒以上と高卒とでどのくらいの収入差があるのかみていきましょう。
大卒と高卒の賃金格差がエグイ
下のグラフを見てください。学歴と年齢別の平均賃金をグラフにしたものです。大学・大学院卒男性の全年齢階級の平均は400.5万円で、50代前半で迎えるピーク時には535.1万円になります。一方高卒の場合は全年齢階級の平均が291.6万円で、ピークでも352.6万円にとどまります。年収にして最大109万円ほどの格差があります。平均でこれだけの差って大変なことですよ(;゚Д゚)


女性の場合、大学・大学院卒の全年齢階級平均が290.1万円、高卒で212.9万円です。ピークは男性のように決まった年齢におとずれず、大卒はその時の地位に大きく影響されるようです。男性ほど極端ではありませんが、それでも最終学歴によって収入に差があることが分かります。
このグラフから分かることは、初任給ではそれほど大きな差はないのに、昇給スピードに大きな違いがあることです。特に男性にその傾向が顕著です。皆が皆、大学で得た知識を昇進に活かしているとは考えにくいので、高給を得るポジションは大卒の方がなりやすい環境があるのではないでしょうか。
偏差値が高いと収入も高い?
| 大学名 | 分類 | 平均年収 | 偏差値 | |
| 1位 | 東京大学 | 国立 | 631.5万円 | 67.5〜72.5 |
| 2位 | 一橋大学 | 国立 | 628.1万円 | 67.5〜72.5 |
| 3位 | 東京工業大学 | 国立 | 615.7万円 | 62.5〜65 |
| 4位 | 京都大学 | 国立 | 587.0万円 | 55〜77 |
| 5位 | 慶應義塾大学 | 私立 | 589.9万円 | 60〜72.5 |
| 6位 | 電気通信大学 | 国立 | 582.6万円 | 52.5〜57.5 |
| 7位 | 首都大学東京 | 公立 | 570.6万円 | 52.5〜60 |
| 8位 | 北海道大学 | 国立 | 560.6万円 | 55〜67.5 |
| 9位 | 東北大学 | 国立 | 555.7万円 | 52.5〜67.5 |
| 10位 | 防衛大学校 | – | 551.9万円 | – |
参考・2013年10月~14年9月末に転職サービスDODAに登録した人の年収を基に作成した「卒業大学別平均年収ランキング」

先ほどの調査では大学をひとくくりにしていますが、大学には「東大」から「Fラン」まであります。では、大学の中でも偏差値が高いほど収入高かったりするのでしょうか? ある転職サービスが調べた偏差値と年収の関係を表すデータはこちらです。
ご覧の通り、超有名大学の名前ばかりがランクインです(慶応があって早稲田がないのは謎ですが)。偏差値は学部によって大きな差があるので上記はあくまでもざっくりですが、それにしてもあからさまに偏差値が高い大学出身者が高収入になっています。
ちなみにこれは薬科大学を除いたデータです。薬科大学は薬剤師養成専門の学校なので卒業生はみんな薬剤師になるので、平均すると年収が東大を抜いちゃったりするので除外しました。
学歴で収入差がつく原因3つ
どうしてそんなに収入に差がついてしまうのでしょうか?雇用契約書に「東大は月給30万円、Fランは20万円」って書いていません。収入に差がつく原因として考えられる要素は3つです。
- 企業規模
- 雇用形態
- 業種
それぞれ見ていきましょう。
企業規模が大きいほど高収入だから
日本の場合、賃金の高さは企業の従業員数にほぼ比例します。つまり、大企業ほど高収入なのです。従業員数 1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」とした場合、平均賃金は年齢によって以下のように変わります。


学歴別の賃金の推移と同じように、入社した当初は大企業も中小企業もあまり給料は変わらないのに、昇給のスピードが全然違います。大企業と小企業では、ピーク時に最大170万円ちかくもの年収差があります。もちろん平均なので小さい企業でも高給取りの人はいくらでもいますが、全体では企業規模が大きいほど給料が高くなっています。
一般的に大企業に就職しやすいのは学歴の高い人です。建前上はどの企業も「学歴不問」としていますが、超人気企業に採用された人の顔ぶれを見ると、やっぱりというか結果的にというか、高学歴の人が多くを占めます。学歴にそのまま値段が付くのではなくて、高学歴→大企業→高収入という流れなのですね。
雇用形態による格差がひどいから
もうひとつ、大きな要素があります。年収に大きな格差を与えているのは雇用形態です。正社員かそうでないかで収入に大きな差が出るのはよく知られています。下の図のように正社員以外では昇給がほとんど見込めず、正社員との年収差は最大で181万円ほどあります。さらに、施設が使えないなど福利厚生における待遇の差もあります。


そして、雇用形態に大きな影響を与えるのが学歴です。2013年の調査ですが、大学卒の人が正社員になれる割合は79.6%なのに対し、高卒の人が正社員になれる割合は57.1%しかありません。今はちょっと景気が良くなってきているので全体的に正社員の比率が上がっているかもしれませんが、それにしても大卒や大学院卒が有利なのは変わりません。
低学歴
↓
正社員になれない
↓
低賃金という因果関係になっているのです。
高収入の業種には学歴が要求されるから
あとは業種による収入差も見逃せません。一般的に高度な専門知識や専門技術を必要とされる業種は賃金が高くなります。そういったスキルの高さはどこの学校で学んだかが重要な手掛かりなので、一部の専門学校を除けばやはりどこの大学のどの学部を出たかが就職の際に重視されます。
業種ごとの平均年収を見てみましょう。
医学部・歯学部・薬学部は医師や薬剤師など医療系専門職になることが非常に多く(そのための学部ですし)、収入も高めになります。
理学部・工学部は製造や精密など日本のメーカー企業に就職することが多く、これらの業界では年功序列で年収が上がっていく傾向が強いため、平均年収が高くなることが考えられます。
経済学部・経営学部・商学部出身者の年収が高いのは、金融機関やコンサルティングファームへ就職する人が多いためだと思います。どちらも給与が高いことで知られたあこがれの業界ですね。
このように、年収は業種に大きく関係し、業種は出身大学に大きく影響します。心理学や家政学だってすごく大事な分野なのに、賃金に結びつかないのは悲しいですね…。
公務員にも学歴が影響する?
安定して給与が高水準なのは公務員ですが、公務員になるにも学歴は影響するのでしょうか?
採用で学歴を参考にすれば差別にあたる
公務員試験では、学歴に限らず性別や障害の有無で採用に差をつけることは厳密に禁止しています。したがって学歴によって試験が受けられなかったり採用に不利だったりすることはありません。しかし、合格者の顔ぶれを見ると結果的に高学歴が多いということはあるそうです。公務員は今や人気ナンバーワンの職業ですので、優秀な人を選ぶと有名大学出身者の確率は高いでしょう。現に、最難関といわれる「国家公務員採用総合職試験」の合格者は東大がダントツで1位、京都大学、早稲田大学と続きます。
◆国家公務員総合職試験の出身大学別合格者数
| 順位 | 大学 | 院卒者 | 大卒程度 | 合計 |
| 1位 | 東京大学 | 143人 | 164人 | 307人 |
| 2位 | 京都大学 | 60人 | 66人 | 126人 |
| 3位 | 早稲田大学 | 32人 | 65人 | 97人 |
| 4位 | 北海道大学 | 28人 | 53人 | 81人 |
| 5位 | 東北大学 | 33人 | 42人 | 75人 |
| 5位 | 慶應義塾大学 | 24人 | 51人 | 75人 |
| 7位 | 九州大学 | 26人 | 40人 | 66人 |
| 8位 | 中央大学 | 26人 | 33人 | 59人 |
| 9位 | 大阪大学 | 19人 | 39人 | 58人 |
| 10位 | 岡山大学 | 6人 | 49人 | 55人 |
| 11位 | 東京理科大学 | 21人 | 29人 | 50人 |
参考・リセマム「国家公務員採用総合職試験2019 総合職試験(院卒者・大卒程度試験)出身別合格者一覧」
学歴要件はあくまでも目安
国家公務員の総合職・一般職の試験、および地方公務員試験は、受験の目安として「上級(大学院卒・大卒程度)」「中級(短大卒程度)」「初級(高卒程度)」の3段階に分かれています。これは大卒じゃないとダメといった意味ではなく、そのくらいの学力がないと受からないよ、という目安に使われます。ただし国家公務員の「院卒者」の区分では大学院の卒業資格が必要です。地方公務員試験の場合、自治体によっては学歴要件があるところがあるようです。
学歴ではなく“学力”が大きく影響
公務員試験はとても広範囲で難しく、お勉強ができないと受からないのは確実です。公務員試験では教養試験、専門試験、論作文、そして面接試験が行われます。公務員試験の科目数は非常に多く、教養試験、専門試験合わせて30科目はあります。広さだけでなく専門知識も必要で、事務系では法学や経済学、政治学、行政学、技術系では電気や土木等といった大学の工学部レベルの知識が求められます。つまり、受験資格が学歴によって左右されることはありませんが、公務員試験に受かるのは必然的に学力の高い人ということになります。
低学歴はお先真っ暗なのか?
ここまで来ると、学歴がないとすべてが終わるみたいな感じになってしまいますが、あくまでも「学歴が高いと高収入になる“可能性”が高い」というだけの話なので、そうではないことを強調しておきたいです。
「学歴の一点買い」は危険
勉強はした方がいいし学歴もあったら安心だけれど、そのために友達も彼女も時間も体力もすべて受験につぎ込んできたのにいざという時に「あれ?学歴って意外と役に立たないな」となったら、次に打てる手がなくなってしまいます。学歴以外にも勝負できる要素があれば、世の中の基準や流れが変わっても順応して生きていけます。持ち駒は多いに越したことはありません。
現に、仕事ができる人は本当に引き出しがたくさんですよね。好奇心が強いのか勉強家なのか、知識や経験に幅があります。そういったことは受験のための勉強からは得られませんから、自分のための時間は小さい頃から持っていた方が良さそうですね。何を重視するかは人それぞれですが、学歴のためのすべてを犠牲にするのは本末転倒の可能性が高いです。
学歴がなくても「勉強力」があれば大丈夫
学校や受験文化がどうしても合わなくてレベルの高い大学に入れなかったという人もいるでしょう。しかし、勉強が好きであれば、社会に出ても全く問題ないと思います。好きなことを突き詰めてもいいですし、資格や公務員試験という方向に活かしても良いと思います。エントリー数が膨大で学歴でフィルターをかけるしかない大企業への就職は難しいかもしれませんが、勉強熱心な人はどこに行ってもウェルカムなはずです。学歴もないし勉強もキライとなると高収入は諦めた方がいいかも知れません。
結論:雇われない生き方を選ぶなら学歴は不要かも

学歴は、膨大なインプットを与えられて「俺の期待する答えを出せ」という要求にしっかり応えられた人に与えられるものです。つまり、雇われるためのスペックをはかるものです。
特に起業や自営に深い関心がなく、安定した給与をもらうことを自分の人生において重要という人であれば、学歴はあった方が良いでしょう。
逆に、自分で自分の道を切り開けるタイプの人には不要かも知れません。特にこれからは「企業に雇われる」以外の働き方が増える流れにありますから、学歴偏重もだんだんゆるくなっていくことも考えられます。
だからといって「じゃーやっぱり学歴なんかいらないじゃん♪」と安易にならず、自分が「雇われない生き方ができるタイプ」なのか、「単に人の指示に従うのがイヤなだけ」なのか、しっかり見極めることが大切だと思います。






