このページは「2017年冬のボーナス」の記事です。最新のボーナス特集記事は、

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白金ちな

12月に入って楽しみなものは、冬休み、忘年会、クリスマス、そしてボーナス!

ボーナスの語源は、ラテン語で「良い」という意味の「bonus(ボヌス)」なのだそうです。確かに、良い。ボーナスは、良い。

今年は企業の業績も良かったそうなので、ボーナスの増額も期待できます。大手シンクタンクや経済新聞、経団連からもボーナス予想が続々と発表されていますので、今回は2017年冬のボーナス予想を特集したいと思います。

夏のボーナスもわくわくしますが、冬のボーナスはやっぱり格別ですねー。

ボーナスが決まる仕組み

全体的な話をする前に、まずボーナスが決まる仕組みについて説明します。

業績重視か個人の成果重視か

ボーナスはもともと企業の利益を社員に配分しましょうということから始まりましたが、今では利益の配分だけでなく社員の労働意欲を高めるためや成果への報酬といった目的のためにも支払われます。

タイプとしては2つ、業績連動型成果報酬型があります。業績連動型は期間内の利益に基づいて算出され、決め方が分かりやすいのが特徴です。成果報酬型は個人の仕事の成果に基づくもので、モチベーションアップにつながる一方で、基準によっては不満が残るケースも。「ボーナス査定が…」ってよく聞く嘆きですよね。

大企業と中小企業では決まり方が違う

給料はきちっとしたルールで支払うことが法律で定められていますが、ボーナスについては経営側の裁量が大きくはたらきます。賞与額の決定方法も雇用契約書や就業規則の定め方次第で、大企業と中小企業とでは大きな違いがあったりします。


◎中堅・大企業 ⇒ 客観的な計算式に基づくことが多い

一般的な例:

所定内給与(月給) × 支給月数 × 評価係数 = ボーナスの額

30万円 × 1.5か月分 × A評価(1.2) = 54万円



◎中小企業 ⇒ 経営者のノリで決まる場合が多い

社長「A君は頑張ったから30万円、B君はその半分」

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上のはちょっと極端ですが、大きい企業ほど客観的で複雑、小さい企業ほど主観的で単純といった傾向があるのは確かです。

大企業は客観的とはいっても分かりやすいわけではなく、労働組合との交渉や評価基準の複雑さから一介のサラリーマンに支給額の根拠をつぶさに理解するのは難しいでしょう。中小企業は良くも悪くも経営者次第なところがあります。

あなたの会社がどのタイプなのか、一度調べてみてもいいかも知れません。

2017年冬のボーナス全体の傾向

ボーナスの決まり方は企業次第なので、全体の傾向が個人すべてにあてはまるわけではありません。しかし、景気や経済の流れを読むのには役立ちます。その点を踏まえて、今年のボーナスの支給総額や1人当たり支給額を見ていきましょう。

支給総額は3.6%増!

ボーナスが日本全体でいくら支給されたのかを表すグラフです。2017年はみんながもらうボーナスを合計すると民間だけで16兆円に達すると予想されています。

ボーナス支給総額年次推移

※みずほ総合研究所「2017年冬季ボーナス予測」をもとに著者作成

企業業績は堅調で、人手不足のため待遇の改善が進んでいることから、ボーナス額も増えるであろうという見込みです。ここ数年は民間・公務員共に支給総額が増加傾向にあり、今年は支給されるボーナス総額が前年の3.6%増加するとの予測です。支給されたボーナスの全体額が増えると消費も増え、景気が良くなることが期待されます。

しかし、支給総額が増加しているからといって、みんながもらえるボーナス額がアップするとは限りません。というのは、受け取る人が増えると、たとえ1人当たりのボーナスが減っていても支給総額は増えるからです。

1人当たり支給額は微増、支給総額アップはもらえる人が増えたから

民間公務員
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予想37万2,235円
(0.6%72万1,841円
(2.4%
みずほ総合研究所の予想37万4,350円
(1.1%78万9,334円
(3.5%

個人がもらえる金額を知りたい時は「1人当たりの支給額予想」を見ます。大手シンクタンク2社の調査によると、民間は1%弱、公務員は3%程度の増加が見込まれます。支給総額3.6%増に比べて数字がひかえめなのは、個人の受取額が増えたからではなく、支給対象者が増えたからでしょう。雇用者数の増加や非正規労働者が対象に加えられる流れが考えられます。

公務員と民間の格差に涙が止まりませんが、民間は中小企業から大企業まで合わせた平均です。大企業だけに限ると、ボーナスの額は公務員を軽くしのぎます。

民間企業のボーナス事情

民間企業に限るとボーナスはどのような状況になるのでしょうか。

大企業は5年ぶり減少

妥結額増減率
総平均91万6,396円1.19%
製造業平均92万1,907円1.22%
非製造業平均66万7,858円0.73%
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経団連が発表した2017年年末賞与の「大手企業業種別妥結状況」によると、大企業の従業員の冬期ボーナスは約92万円です。

大企業とは、東証一部上場、従業員500人以上、日本を代表する主要21業種大手251社を指します。妥結額とは労使交渉で合意された金額で、ほぼこの通りに支給されることが予想されます。92万円かー(遠い目)。

金額を見るとうらやましい限りですが、実は前年比なら1.2%ほど減っています。100万円が98万8,000円になるくらい。大企業の冬のボーナスの妥結額が減少したのは5年ぶり。特に製造業の低下が顕著です。最近製造現場における不振や不祥事が相次いでいるので、日本のモノづくりの将来がちょっと心配になってきます。

業種別では食品と非鉄・金属が増加、自動車が減少

妥結額増減率
非鉄・金属76万3,468円3.72%
食品91万6,256円4.40%
紙・パルプ68万7,197円1.52%
化学88万8,951円2.31%
セメント76万6,601円1.09%
電機85万2,098円0.34%
自動車97万1,070円1.94%
造船81万4,747円1.60%



業種別では「自動車」が大きな押し下げ要因となっています。ただ、自動車業界は業績が悪かったわけではなく、労使交渉でベースアップ(ベア)を重視した労働組合がボーナスの要求額を低めにしたことが要因ではないかといわれています。逆に好調だったのは「食品」で、4.4%も増加しています。こちらは業界全体の業績が堅調だったことを受けての増額でしょう。

ただ、これらの妥結額はまだ全体の半分も集計が終わっていない途中経過です。残りの企業の状況によっては内容も変わってくるかもしれません。

中小企業のボーナス増加が期待できる

大企業のボーナスが減少しているのに、民間全体では増加しているのはどういうことでしょうか?それは、中堅・中小企業のボーナス支給額の増加を表しているのではないでしょうか。

大企業に比べて中小企業は統計データが少ないのでボーナスの予測が難しいのですが、賃金の動向から推測するに今年は中小企業のボーナスが増えるのではないかと予想されています。中小企業のボーナスは経営者のさじ加減であることは先ほどお話したのですが、それでも所定内給与(月給)は大きなが基準となります。

所定内給与の推移

参考・みずほ総合研究所「2017年冬季ボーナス予測



2016年から2017年にかけて、大企業の所定内給与は減少傾向にありますが、従業員数100人~499人の中堅企業においては賃金の上昇が見られます。日本全体で労働者数が不足していますが、特に中小企業では人手不足感が強く、ボーナスを上げることで離職を防ぎ労働意欲を高めようとする動きがあるものと考えられます。

中小企業のボーナス支給額は?

現在の中小企業のボーナス額はどのような水準なのでしょうか。2016年の年末賞与の支給結果を見てみると、1人当たり平均支給額は以下のようになっています。

従業員数1人当たり支給額
500人以上63万4,044円
100~499人43万3,522円
30~99人33万2,114円
5~29人26万8,871円

見事に従業員数とボーナス額が比例しているわけですが、大企業については近年伸び悩む傾向にあります。従業員数30人未満の小規模事業者は昨年前年比マイナスとなっており、力強さがありません。一方で従業員数100人~499人の中堅企業は前年比1.8%プラスと勢いがあります。つまり、大きすぎる企業と小さすぎる企業は横ばいかマイナス、中くらいの企業が増加傾向ということです。

2016年年末賞与支給状況

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」より著者作成

「公務員最強」はまだ続く

一方、公務員はどうでしょうか。公務員は給与や賞与を内閣人事院で決めているので、比較的予測が簡単です。

公務員は約3%の増額

公務員のボーナスは前年比2.4%~3.5%増の72~79万円になる見通しです。公務員の賞与額は内閣人事院で算定しており、所定内給与も支給月数も引き上げられたことから、どの調査でも増額予想となっています。ちなみに公務員のボーナスは給料の2.3か月分です。

公務員優遇にはいいこともある

地方公務員も国家公務員に準ずることが多いので、同じような水準になると考えられます。公務員ばっかり優遇して!という声も聞こえてきそうですが、民間でも調査機関や学校法人など多くの企業で公務員の給与体系に準じているところがあり、公務員の待遇を下げると日本全体の景気に悪影響を及ぼしかねません。日本中で賃金が伸び悩む中、公務員が所得の下支えをしている一面もあるのです。

ふだんの給料からボーナス額を推計する方法

民間企業全体や業種全体の話をされてもピンと来ないかも知れませんね。ここにおもしろいデータがあります。年収階級別の平均ボーナス支給額です。これを見れば、同じくらいの年収の人は平均してどのくらいのボーナスをもらっているのかが分かります。

年収平均勤続年数平均年間賞与冬季のみ(÷2)
100万円以下7.8年1万2,000円6,000円
200万円以下9.5年4万3,000円2万1,500円
300万円以下8.9年19万2,000円9万6,000円
400万円以下9.3年44万1,000円22万500円
500万円以下11.6年68万2,000円34万1,000円
600万円以下14.7年94万2,000円47万1,000円
700万円以下17.3年124万8,000円62万4,000円
800万円以下19.6年147万0,000円73万5,000円
900万円以下20.5年171万2,000円85万6,000円
1,000万円以下21.1年200万2,000円100万1,000円
1,500万円以下21.1年234万6,000円117万3,000円
2,000万円以下19.7年247万8,000円123万9,000円
2,500万円以下20.1年236万1,000円118万0,500円
2,500万円超21.0年324万8,000円162万4,000円



年収が400万円の人なら、年間にもらえるボーナスは44万円、冬だけに限ると単純に半分にしたとして22万円、という計算です。いかがですか?あなたはそれよりももらえていますか?

先ほど一部上場の大企業は92万円ほどという話をしましたが、その人たちはだいたい年収が900万円~1,000万円に該当する人たちです。勤続年数でいうと20年以上、ベテランですね。年収が2,500万円を超えるとボーナスは年間300万円以上、ここまでくるとうらやましくさえなくなりますね。

結論:対象者が広がったのは良いこと

白金ちな


2017年冬のボーナス予測を調べた結果のまとめはこうです。

  • 新たにもらえる人が増える
  • 大企業は金額あまり増えない
  • 零細企業もちょっと厳しい
  • 中堅企業は期待大
  • 公務員最強

おそらくしばらくはこんな状態が続くんだろうなーと思うのですが、少しずつ、非正規の人にもボーナス支給の流れが出てきているのは歓迎できます。といってもまだ公務員の非常勤職員が中心。「隗より始めよ」で民間にも波及するのか、「隗だけもらって終わり」になるのか、引き続きチェックしていきたいです。